亀山社中を語る前に、「幕末」というものの
予備知識が少々あった方が話がわかりやすい。
坂本龍馬が駆け抜けたこの時代は、江戸幕府の
開闢以来、歴代徳川将軍の下で太平の世を過ごして
来た日本にとって250年ぶりに訪れた動乱の時代
であった。同じ動乱でも戦国期とは内包する意味が
大分異なっている。
中央権力である幕府と、幕府による弱体化政策の目を
巧みにすり抜けて密かに国力を蓄えてきた有力諸藩の
思惑が陰に陽に激突した時代であり、下級藩士や
民衆の間に急速に広まった民族主義的思想などが
絡み合って、様々なものが蠢き始めた複雑な時代で
あったのである。
■坂本龍馬の生きた時代
坂本龍馬と関わりの深い長州と薩摩の両藩は
幕末の動乱においては倒幕の立役者であり、
二大勢力と思われがちであるがこの両藩の関係は
時代と同様それほど単純なものではない。
関が原では西軍についたため、徳川幕府に対して
恨みを持ち、それが幕末の倒幕を招いたというのは
少し話が単純過ぎる。
関が原の時代は、まだあくまで日本国内の勢力争い
だった。日本の各地に、領地を持った群雄が割拠し
覇権を争っておりこの日本という土地を誰が治めるか
競っていたわけである。しかも朝廷から「征夷大将軍」
という任命を受けるのを争うという、見方を変えれば
ただの権力争いとも言えるものだった。
しかし幕末は欧米列強という外からの圧力があり、
その力に対抗するためにはどうしたら良いか幕府も
諸大名も庶民でさえも悩み、考えそして行動した。
欧米列強はその強力な軍事力を背景に植民地(早い
話が簒奪するための属国である)の獲得競争を繰り広げ、
その手を遠く離れた東アジア各国にまで伸ばして
いたのだ。戦国期とは背景とする状況がまるで
違うのである。
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■坂本龍馬びいきのご隠居のつぶやき■
欧州各国は日本に先行すること半世紀、いち早く近代へと
脱皮していた。その力を以って外に乗り出したのであるから
当時の日本人が困惑・混乱したのも無理は無い。前近代的な
「太平の眠り」を砲撃の轟音で揺さぶり起こされた日本人は
それでも何とか力に対応しようと必死になったのである。